今回VAIOの【VAIO Z】をお借りしました。
フルカーボンボディを採用!14インチモデルらしからぬ超軽量ボディを実現した、高性能モバイルノートをチェックしてみましょう。
スペック
※2022年5月17日時点での内容です。製品仕様・販売価格については変更となる可能性があります。
外観
フルカーボンボディ
ボディは、14インチサイズとなっています。モバイルノートで定番の13インチモデルよりも大きな画面を搭載し、それでいて軽量ということで、最近人気のサイズですね。
このモデル最大のセールスポイントは、なんといってもフルカーボンボディです。
航空機にも使われる、とても軽くて頑丈な素材ですが、それをボディのほぼ全面に使用しています。従来からカーボンを使用したモデルはあるものの、あくまでも天板やキーボード面など一部のみなので、それらとは一線を画しています。
ちなみに、このモデルのカーボンの強度(比弾性率)は、多くのモバイルノートで使用されているマグネシウム合金の約2倍!さらに、アメリカ国防総省制定の”MIL規格”もクリアしており、とても頑丈です。
携帯性に優れた超軽量ボディ
タフボディもさることながら、コンパクト&超軽量というのもポイント。
ディスプレイのベゼル(ふち)をスリムにすることで、横幅と奥行きを圧縮。
その結果、A4ファイルサイズ並みのサイズを実現しています。
さらに、厚さも最厚部で12.2mmと、1.5cmを切るウルトラスリムボディということもあり、カバンにサッと収納できます。
極めつけがボディの重さで、なんと実測で960g!さすがに1kg前後だと本体の重さをあまり感じないので、持ち運びが本当に楽ですね。
なお、900g台というのは、14インチモデルでトップクラスの軽さです。およその相場は1.3~1.5kgということを考えると、そのすごさがわかりますね。
デザインは、スマートな漆黒のボディに控えめなロゴのみと、かなりシンプル。機能美重視のデザインですが、ヒンジ部分を切り欠くことで、スタイリッシュに仕上げるセンスの高さは、さすがVAIOといったところですね。
カラバリは、貸出機のブラックのほか、シグネチャーブラックが用意されています。シグネチャーブラックでは、大胆にもカーボンの繊維が見えるようになっており、なかなかオシャレです。
リフトアップヒンジ搭載
機能面もしっかり考えられており、”リフトアップヒンジ”を搭載しています。リフトアップヒンジとは画面を開いたときに、ボディがせり上がるギミックのこと。
適度な傾斜ができるためタイピングしやすくなるほか、接地面とパソコンの間にすき間が空くことで、給排気がスムーズになり、冷却能力もアップします。下にノートPCクーラーを置いているようなもので、熱い夏場でも安心。
リフトアップヒンジ搭載モデルは多くなってきていますが、傾斜の大きさはVAIOならでは。かなりタイピングしやすいのはいいですね。
最先端のインターフェース
両サイドに排気口を配置しているため、USBは小型&リバーシブルのType-Cポート×2と最低限。
ただし、最新規格をしっかりおさえており、小型&リバーシブルのType-Cポートは、USB 4規格となっています。さらに”Thunderbolt 4”にも対応しているので、最大40Gbpsの超高速転送が可能です。
USB以外には、映像端子のHDMIポートのみで、SDスロットなどは無し。インターフェースの内容については、割り切りが必要ですね。
なお、カスタマイズにて5Gモジュールをカスタマイズできます。データ通信SIMさえあれば、いつでもどこでもネット環境を利用できます。フリーWiFiスポットを探す手間が省け、まさにストレスフリーですね。
SIMのサイズは一番小型のnanoSIMに対応しています。
安心のセキュリティ機能
セキュリティ面もしっかり配慮され、カメラ部分にプライバシーシャッターを装備しています。使わないときはシャッターを閉めることで、不正アクセスなどからプライバシーを保護することができます。デバイス機能のON/OFFではなく、物理的にシャットアウトするのでとても安心ですね。
さらに、電源ボタンは指紋認証センサーを兼ねているほか、顔認証センサーも搭載。本人認証のため、ログインパスワードよりも安全。また、ログインの際わざわざパスワード入力することなく、とてもスムーズです。
ディスプレイ&キーボード
IPSパネル搭載の高品質ディスプレイ
ディスプレイは、モバイルノートではやや大きめの14.0インチサイズを搭載しています。主流の13.3インチに比べると一回り大きく、ゆったりとした感じで視認性は上々です。
解像度は現在主流のフルHDとなっています。HDよりもきめ細かい画面表示ができるほか、表示領域が広く、オフィスソフトでの作業もはかどります。
パネルには高コントラスト・高発色・高視野角の3点を兼ね備えた、IPSパネルを採用。透明感のあるグレアディスプレイも相まって、画面表示はとても美しく、動画鑑賞にも最適です。
この通り、横から見ても色むらがほとんどありません。参考までに、型番(AUO623D)のスペックをチェックすると、sRGBを100%カバーしており、プロ向けとは言えないものの、編集用途にも使えるクオリティです。
ちなみに、カスタマイズにて4Kディスプレイ(3840×2160)に変更できます。フルHD画面を4つも表示できる圧倒的な画素数で、息を吞むような精彩な画面表示が可能です。4Kコンテンツを楽しめるだけでなく、動画や画像編集もよりはかどります。
さらに、4Kディスプレイは、HDRに対応しているのもポイント。
HDRは、普通の映像(SDR:Standard Dynamic Range)よりも、映像の明るさの幅を広げ、肉眼で見る自然な明暗差・リアリティーを再現する技術のこと。明るいところはより明るく、暗いところはより暗くなり、映像に深みが生まれます。
完成度の高いキーボード
13インチ+αのサイズということで、テンキーレスキーボードを採用しています。表面はカーボンということで、マットな触り心地ですね。金属ボディとは違い、ひんやりした感じがしないのはグッド。
基本的なキーは大きく造られ、キーピッチも約19mmとデスクトップキーボード並みの間隔を確保。さらに、配置そのものは素直で、電源ボタンも右上に独立して配置されていることもあり、誤爆の心配はまずありません。
キーそのものは最低限の内容ですが、任意に設定できるファンクションキーが多く、F8~F12まで用意されています。イメージの通り、設定項目が豊富に用意され、しっかりカスタマイズすれば、利便性は大幅に向上します。
キーストロークはやや深め。適度に反発があり、わりとしっかりした打鍵感ですね。ちなみに、キートップは中央部分がカーブしており、指にフィットしやすくなっています。細かいところもしっかり造りこまれているのは好印象。
もちろん、トレンドの白色LEDをバッチリ内蔵しています。ふんわり浮かび上がるような輝き方で、とても上品な感じ。ON/OFFの設定は付属アプリで調整可能で、さらに、消灯までの時間まで設定できる親切仕様なので、とても便利です。
分離タイプのタッチパッド
タッチパッドは、パッド部分とクリックボタンが別の分離タイプとなっています。一般的なノートでこのタイプは、ちょっと珍しいですね。
タッチパッドはサラサラした素材になっており、カーソル操作はとてもスムーズ。クリックボタンも分離しているので、一体型よりも操作性がとても高く、軽く押すだけでしっかり反応し、非常に快適。クリック音が小さいのもグッドです。
ベンチマーク
各種ベンチマークソフトで実際の性能をチェックしてみました。
CINEBENCH R23
まずは、3Dグラフィックのレンダリングソフト【CINEBENCH R23】で、CPUのシングル・マルチでの性能をチェックしてみました。
貸出機では、第11世代の4コア8スレッドCPU・Core i5-11300Hを搭載しています。”Hシリーズ”のCPUということで、高い動作クロックとTDPにより、一般的なCPUよりも優れたパフォーマンスを発揮します。ゲーミングノートならともかく、モバイルノートで搭載するのはレアケースですね。
参考までに、同じく第11世代となる一般グレードのCPU・Core i5-1135G7(4コア8スレッド)と比較してみると、シングルスコアはほぼ同じですが、マルチ性能は約28%も上回っています。さすがHシリーズなだけあり、パワーは段違いに高いです。
ちなみに、強力な内蔵グラフィック機能・Iris Xe Graphicsを搭載しているのもポイント。従来の内蔵グラフィックを軽く凌ぐ高い性能で、編集作業から軽めのオンラインゲームまで対応できます。
3DMARK
3DMARKは、グラフィックボードやCPUを含めたグラフィック能力を総合的に測定するベンチマークソフト。
DirectX 9(Ice Storm)・DirectX 10(Cloud Gate)・DirectX 11(Sky Diver/Fire Strike)、そして最新のDirectX 12(Time Spy/Night Raid)・RT(Port Royal)それぞれの条件で測定することができます。
高いパフォーマンスがセールスポイントとなる”Iris Xe Graphics”の実力ですが、下位の内蔵グラフィック・UHD Graphicsの約3~4倍にもなる破格の性能となっています。
総合スコア | Graphics Score |
CPU/Physics Score |
Combined Score |
|
Time Spy | 1569 | 1398 | 5117 | ー |
Night Raid | 16683 | 19111 | 9702 | ー |
Fire Strike | 4208 | 4613 | 13519 | 1564 |
Sky Diver | 13563 | 13574 | 15656 | 15304 |
Cloud Gate | 18588 | 26513 | 9085 | ー |
Ice Storm | 84689 | 93565 | 63581 | ー |
PCMark 10
【PCMark 10】は、ブラウジング・ビデオチャット・動画や画像の編集作業・軽めの3Dゲームなど、一般的な用途での性能を測る定番ソフトです。
快適な動作が期待できるスコアは3000以上となりますが、スコア4000後半をマークしており、パワーは十分。ブラウジングやオフィス作業などの軽作業はもちろん、動画・画像編集にもしっかり対応できます。
なお、Core i5-1135G7との差は、総合スコアで約6%と小さめ。ただし、編集系のスコアが約20~30%ほど上回っており、特にヘビーな作業で真価を発揮します。
動画エンコード
【TMPGEnc Video Mastering Works 7】を利用し、再生時間6分30秒のMJPEG動画をMP4形式に変換する時間を計測しました。
エンコーダーはx264(H.264)およびx265(H.265)を利用し、それぞれ2パス・1パス・QSVでエンコードしています。なお、QSVはグラフィック機能を利用した高速エンコード機能のこと。
H.264(フルHD) | 2Pass | 1Pass | QSV |
Core i5-11300H | 34:00 | 17:45 | 3:10 |
Core i5-1135G7 | 49:21 | 25:21 | 3:16 |
まず軽めのH.264をチェック。CPU勝負のソフトウェアエンコード(2Pass・1Pass)では、やはりCore i5-11300Hが有利。Core i5-1135G7よりも約30~31%早く変換を完了しています。
一方、QSVでは約3%差と誤差レベル。内蔵グラフィックが同一なので、差がほとんどつかない感じですね。
H.265(フルHD) | 2Pass | 1Pass | QSV |
Core i5-11300H | 53:33 | 26:46 | 4:00 |
Core i5-1135G7 | 1:15:22 | 37:09 | 4:05 |
重量級のH.265でも同じような傾向で、ソフトウェアエンコードでは、Core i5-11300HがCore i5-1135G7に約28~29%差をつけています。なお、QSVでは変わらずほぼ互角となっています。
画像変換
【Lightroom Classic CC】を使い、200枚のRAW画像(5760×3840ドット、CR2形式)をDNG形式に変換する時間と最高画質のJPEG画像に書き出す時間をそれぞれ計測しました。
JPEG書き出しの際は“スクリーン用・標準”のシャープネスを適用しています。シャープネス処理が以外とCPUに負担をかけるため、特にCPUの性能が重要になります。
CR2→DNG | CR2→JPEG | |
Core i5-11300H | 0:59 | 3:00 |
Core i5-1135G7 | 1:19 | 3:50 |
このテストもCPU勝負なので、やはりCore i5-11300Hが有利。Core i5-1135G7に比べ、軽めのDNGでは約29%、重量級のJPEG変換でも約22%早く変換を完了しています。
ドラクエ10
グラフィック品質にこだわらなければ、ノートPCでもプレイできるほどの軽さが特徴です。スコア5500以上で平均60fpsをキープできます。
最高品質 | 高品質 | 標準品質 | |
フルHD | 12954 | 14811 | 16405 |
オンラインゲーム屈指の軽さとは言え、フルHDでスコア10000を軽々突破。従来のUHD GraphicsだとフルHD・標準品質でもスコア5500前後だったことを考えると、だいぶ進化しています。
FF14(ファイナルファンタジー14 暁月の終焉)
知名度バツグンの国内産MMORPGですね。スコア9000以上で平均60fpsをキープできます。現行のゲーミングPCであれば、フルHD・最高設定でスコア9000をしっかり超えたいところ。
最高品質 | 高品質 | 標準品質 | |
HD | 7014 | 9002 | 10821 |
フルHD | 3782 | 5308 | 6961 |
重量級のゲームには力不足となり、HDでようやくスコア9000をクリアします。フルHDでオンラインゲームを楽しめるのは、軽めのものに限られ、基本的にはHDが適正レベルですね。
CrystalDiskMark
【CrystalDiskMark】は、ストレージの読み書きの転送速度をチェックソフトです。ポイントはランダムデータ(4Kと書いてある項目)の転送速度。これが速いほど、ブラウジングやアプリの動作が速くなり、実用的なストレージといえます。
このモデルでは、256GB SSDを搭載しています。128GBだと実質使える容量は100GB未満と少ないですが、256GBもあればアプリやデータ類を多めに保存できます。
SSDは通常タイプよりも4~5倍高速のNVMeタイプで、なんと超高速のPCIe Gen.4規格を採用する本格派仕様。なお、メーカーはサムスンとなっています。
肝心の速度ですが、読み込みの速さが光り、特にシーケンシャル(連続データ)では最大6000MB/sと圧倒的。一方、書き込みはGen.3タイプに近く、ちょっと物足りない感じですね。とはいうものの、十分すぎるほどの速度で、動作はとても快適。OSの起動からアプリの動作までサクサク動きます。
温度
CINEBENCH R23実行時の温度を測定してみました。なお、室温は25℃です。
スリムボディに高クロック&高発熱CPUを搭載しながら、フルロード時でも80℃台をキープ。構成的には90℃オーバーでもおかしくないのですが、しっかり冷却できていますね。
動作音
CINEBENCH R23実行時のPC正面でノイズを測ってみました。※防音室や無響室での測定ではないので、あくまでも参考までにどうぞ
50デシベルを超えるとノイズ感が気になるようになりますが、この通り57.0デシベルと大きく上回っています。ゲーミングノートクラスのノイズレベルで、ファンは豪快に回転しています。高性能&高冷却の反面、静音性が犠牲になっていますね。。通常時は、ファン設定を標準にするのがおすすめ。
なお、最小時は46.9デシベルとありますが、アイドル状態なので、ほぼ無音です。
バッテリー持続時間
「bbench」でバッテリーの持続時間を調べてみました。条件は4つで、実際の使用感に近い設定にしています。
- 電源設定:標準、トップクラスの電力変換効率
- バックライト:40%
- 10秒ごとにキー入力
- 1分ごとに無線LAN経由でネット接続
結果は、約13時間10分と、モバイルノート目安となる10時間をしっかり超えています。HシリーズCPUでこの持ちは驚異的で、出先でも安心して使えます。
便利なユーティリティー機能
システムコントロールでは、動作モードの変更やLEDイルミネーションの設定、ファンクションキーの設定などをワンストップで変更できます。とてもシンプルなツールで、わかりやすいのがいいですね。
なお、サウンドシステムはおなじみの”Dolby”を搭載しています。
シーンに応じたモードに切り替えができるのはもちろん、イコライザーも用意されているので、好みの設定に変更することも可能です。
肝心のスピーカー品質は、低音から高音まで出ており、サラウンド効果もしっかり感じられます。が、音質が軽めなので、迫力にイマイチかけますね。。
まとめ
まさにモバイルノート最高傑作!
フルカーボンボディもさることながら、14インチモデルで1kg以下・HシリーズCPU搭載・長時間バッテリーのすべてを満たすのはこのモデルくらいのもの。クオリティの高さに比例して、価格は30万円台~と非常に高いのですが、モバイルノートを極めるならおすすめです。
あわせて知りたい
3ステップでわかるノートPC+α