今回レノボの【ThinkPad X1 Carbon Gen.11】をお借りしました。
14インチモデル屈指の軽量ボディ!タフなビジネスノートでおなじみ”ThinkPad”の14インチフラグシップモデルをチェックしてみましょう。
スペック
※2023年8月14日時点での内容です。製品仕様・販売価格については変更となる可能性があります。
外観
タフなビジネスモデル
ThinkPad最大の武器は、なんといっても一般ノートを凌ぐ堅牢ボディです。
ビジネスシーンでハードに使い倒すことを想定しており、落下テスト・高温・低温条件でのテスト・ヒンジの耐久テストなど、実際の使用状況に即した厳しいテストのほか、12項目のMIL規格(アメリカの軍事規格)テストをクリアしています。
ボディのサイズや造りは前モデル(Gen.10)と全く同じ。シャーシには、軽くて頑丈な”マグネシウム合金”を使用しています。
さらに、モデル名の通り、天板やキーボード面には、カーボンファイバー(強化プラスチック含む)を採用。カーボンファイバーは航空機の素材にも使われるだけあり、非常にタフで軽く、マグネシウム合金との合わせ技で、特に携帯性を重視する方におすすめです。
なお、天板&キーボード面はラバーコーティングされているのがポイント。手にしっかりなじむ感じで滑りにくく、モバイルノートとの相性は◎。ただし、指紋汚れなどが付きやすいので、こまめにお手入れが必要です。
デザインはIBM時代からほぼ変わらない、いつものThinkPadクオリティですね。フラットなブラックボディは余計な装飾など一切なし。ビジネスにうってつけの、質実剛健なイメージに仕上がっています。
ちなみに、貸出機の天板はオシャレな市松模様ですが、現在販売されているのはブラック一色のプレーンタイプのみという点に注意。
ThinkPadシリーズ屈指の軽量ボディ
ボディは14インチサイズとなっています。画面の大きいモバイルノートとして、13インチと並んで最近人気のサイズです。
ボディの小ささは前モデル譲り。ディスプレイのベゼル(ふち)をスリム仕様にすることで、横幅と奥行きを圧縮。
その大きさは、ほぼA4ファイルサイズとコンパクト。厚さ約1.5cmのスリムボディも相まって、カバンにさっと収納することができます。
また、サイズもさることながら、見た目も野暮ったさがなくスタイリッシュになり、まさに一石二鳥ですね。
そして肝心の重さですが、なんと実測1262g!ThinkPadシリーズではもちろんのこと、14インチノートでは屈指の軽さを誇ります。14インチの標準的なモデルが1.4~1.5kg台ということを考えると、かなり軽いですね。
片手でラクラク持てるので、携帯性はとても良好。
充実したインターフェース
モバイルノートだとインターフェースが犠牲になりがちですが、さすがにビジネスモデルなだけあり、かなり充実しています。
USBは全4ポート搭載。そのうち左サイドのType-Cポート2基は、最大10Gbpsの高速転送が可能な”USB 4”で、さらに40Gbpsの超高速転送ができる”Thunderbolt4”にも対応する最新規格となっています。
そのほか、通常タイプのType-Aポートも2基用意されているので、あらかたの周辺機器を接続できます。そのほかスリムモデルで省略されがちなHDMIポートを搭載しているのもいいですね。
なお、一部モデルでは、右サイドに5G&4Gモジュール(nanoSIM)をカスタマイズできます。データ通信SIMさえあれば、いつでもどこでもネット環境を利用できます。フリーWiFiスポットを探す手間が省け、まさにストレスフリーですね。
セキュリティ対策も万全
セキュリティにもしっかり配慮され、カメラ部分にはシャッターを装備。デバイスからではなく、物理的にシャットアウトするのでとても安心です。
また、全てのモデルで、電源ボタンに指紋認証センサーを内蔵しています。本人認証のため、ログインパスワードよりも安全。また、ログインの際わざわざパスワード入力することなく、とてもスムーズです。
ちなみに、貸出機では顔認証センサーを搭載していますが、こちらはオプションとなります。
ディスプレイ&キーボード
WUXGAディスプレイ搭載
ディスプレイは14インチジャストです。13インチよりも一回り大きく、ゆったりした感じで余裕がありますね。携帯性だけでなく、視認性も重視するなら14インチがおすすめ。
ディスプレイの解像度はWUXGA(1920×1200)、ディスプレイ比率は16:10と、最近はやりのスタイル。主流のフルHD(16:9タイプ)よりもやや縦長なので、一度に表示できる情報量が多く、スクロールの手間が省けるのは便利ですね。
なお、表面は映り込みの少ないノングレアタイプなので、作業にしっかり集中できます。
パネルのクオリティはとても高く、優れた発色と高いコントラストを誇るIPSパネルを採用。400nit(通常モデル)の高い輝度も相まって、動画鑑賞がはかどります。さらに、ディスプレイの色域はsRGB 100%と広く、動画や画像編集にも最適です。
もちろんIPSパネルということで、視野角も広く、横から覗いても色むらは少なめ。なお、このモデルは、下記の通りプライバシー対応ディスプレイということで、若干暗めな感じです。
オプションメニューとなりますが、貸出機では”Privacy Guard”に対応しています。
機能をONにすると、横から見くくなり、のぞき見対策に効果を発揮します。外で使う機会が多いならカスタマイズするのもありですが、かなり高価です。
機能性の高いキーボード
13インチのコンパクトボディなので、テンキーレスキーボードを搭載しています。キーボード上部にはスピーカーを2基搭載。底面配置よりも音がこもりにくくなっているのはいいですね。
基本的なキーは大きめに造られ、配置そのものも素直。キーピッチは約19mmとデスクトップキーボード並みのゆとりがあるので、誤爆の心配はまずありません。電源ボタンがキーボード内ではなく、右上に配置されているのも、地味ながらうれしいです。
ファンクションキーの内容も充実しており、ビジネスに便利なMicrosoft Teams 10での通話キーが配置されているほか、カスタマイズ対応キーやファンクションキーのロック機能も装備しており、とても便利です。
キーボードの操作で気を付けるとしたら、左下の”Control”と”Function”でしょうか。ThinkPad特有の配置で、一般的なモデルとは違い、逆に配置されています。なお、付属アプリでキーの動作を入れ替えることができるので、押し間違いが続くようなら、ぜひ調整しましょう。
キーストロークは、ノートにしてはやや深く、適度な反発も相まって、打鍵感を楽しみながらタイピングできます。また、キートップがくぼんでいるため、指にフィットしやすいのもいいですね。さらに、キーボード面の剛性は非常に高く、強くタイピングしてもビクともせず、安定感はバツグン!
もちろん、全てのモデルで白色LEDを内蔵しています。薄暗い場所でタイピングしやすくなり、仕事の効率がグッと上がるほか、見た目も華やかになりますね。なお、LEDは2段階の明るさに設定でき、もちろんOFFにも設定可能。LEDが苦手という方でも安心です。
トラックポイントで作業効率アップ
ThinkPadといえばコレ”トラックポイント”を装備しています。中央部分の赤ポチ部分がそれですね。言ってしまえばマウスのようなもので、タイピングとマウス操作をキーボードでできるという優れモノです。
クリックボタンの配置も機能的で、一般的なノートとは違い、タッチパッドの上部に装備されています。トラックポイントでカーソル操作をしつつ、クリックボタンで左クリックと右クリックができるということですね。いちいちタッチパッドやマウスでカーソル操作する必要が無いので、作業効率が格段に向上します。
ただし、操作性はかなり特殊なので、慣れが必要です。
クリックボタンは分離式ということで、操作性は非常に高く、スコスコと軽い力で反応し、クリック音はほぼ無音。タッチパッドの表面もサラサラした材質となっており、スムーズなカーソル操作が可能です。
ベンチマーク
各種ベンチマークソフトで実際の性能をチェックしてみました。
CINEBENCH
まずは、3Dグラフィックのレンダリングソフト【CINEBENCH】で、CPUのシングル・マルチでの性能をチェックしてみました。
CPUはインテル第13世代の10コア12スレッドCPU・Core i5-1335Uを搭載しています。最新世代ではありますが、中身は前世代の”Alder Lake”をベースにしており、Core i5-1235Uのクロックアップバージョンといったところですね。
第12世代から設計が一新され、高性能の”P-コア”と省エネの”E-コア”を搭載した、Wコア構成を採用しているのがポイント。タスクに応じて、各コアを使い分け、場合によっては両者を併用することで、効率よく処理できるのが強みです。
ちなみに、ノート用の第13世代CPUには、Hシリーズ・Pシリーズ・Uシリーズの3タイプがあり、一番下位のグレードとなります。
スリム&コンパクトモデルらしく、実際の性能は控えめですね。参考までに、ワンランク上のCore i7-1355U(10コア12スレッド)と比較してみると、シングル性能は約13%、マルチ性能は約22%下回っています。
3DMARK
3DMARKは、グラフィックボードやCPUを含めたグラフィック能力を総合的に測定するベンチマークソフト。
DirectX 9(Ice Storm)・DirectX 10(Cloud Gate)・DirectX 11(Sky Diver/Fire Strike)、そして最新のDirectX 12(Time Spy/Night Raid)・RT(Port Royal)それぞれの条件で測定することができます。
内蔵グラフィックは、高性能の”Iris Xe Graphics”を搭載。その性能はMX400に匹敵するレベルで、内蔵タイプにしては破格の性能となっています。基本的な編集作業ならIris Xe Graphicsで十分対応できます。
総合スコア | Graphics Score |
CPU/Physics Score |
Combined Score |
|
Time Spy | 1443 | 1269 | 6569 | ー |
Night Raid | 14950 | 17094 | 8740 | ー |
Fire Strike | 4266 | 4590 | 13628 | 1667 |
Sky Diver | 13310 | 13155 | 15771 | 11621 |
Cloud Gate | 18486 | 24613 | 9880 | ー |
Ice Storm | 93543 | 104673 | 67958 | ー |
PCMark 10
【PCMark 10】は、ブラウジング・ビデオチャット・動画や画像の編集作業・軽めの3Dゲームなど、一般的な用途での性能を測る定番ソフトです。
ブラウジングやオフィス作業など、基本的なタスクを快適にこなせる目安はスコア3000以上となりますが、スコア5000の大台を突破。ブラウジングやオフィス作業などの軽作業はもちろん、動画・画像編集にもしっかり対応できます。
なお、Core i7-1355Uとの差は総合スコアで約5%程度。普段使いでの使用感はほとんど変わりません。
TMPGEnc Video Mastering Works 7
【TMPGEnc Video Mastering Works 7】を利用し、再生時間6分30秒のMJPEG動画をMP4形式に変換する時間を計測しました。結果は秒で表記しています。
エンコーダーはx264(H.264)およびx265(H.265)を利用し、それぞれ2パス・1パス・QSVでエンコードしています。なお、QSVはグラフィック機能を利用した高速エンコード機能のこと。
H.264(フルHD) | 2Pass | 1Pass | QSV |
Core i5-1335U | 1808 | 916 | 175 |
Core i7-1355U | 1719 | 883 | 163 |
まず軽めのH.264をチェック。CPU勝負のソフトウェアエンコード(2Pass・1Pass)では、Core i7-1355UがCore i5-1335Uよりも早く変換を完了していますが、その差はわずか4~5%。また、QSVでも約7%差と小さめです。
H.265(フルHD) | 2Pass | 1Pass | QSV |
Core i5-1335U | 3030 | 1504 | 242 |
Core i7-1355U | 3062 | 1519 | 215 |
次に重量級のH.265をチェック。H.264とは打って変わって、ソフトウェアエンコードではほぼ互角。QSVでは逆転し、Core i7がCore i5に約11%差をつけています。
Lightroom Classic CC
【Lightroom Classic CC】を使い、200枚のRAW画像(5760×3840ドット、CR2形式)をDNG形式に変換する時間と最高画質のJPEG画像に書き出す時間をそれぞれ計測しました。結果は秒で表記しています。
JPEG書き出しの際は“スクリーン用・標準”のシャープネスを適用しています。シャープネス処理が以外とCPUに負担をかけるため、特にCPUの性能が重要になります。
CR2→DNG | CR2→JPEG | |
Core i5-1335U | 30 | 209 |
Core i7-1355U | 30 | 166 |
このテストはCPU勝負で、軽めのDNG変換では全く同じ。一方、重量級のJPEG変換ではCore i7-1355UがCore i5-1335Uより早く変換を完了し、約21%と大きめの差をつけています。
VALORANT(ヴァロラント)
解像度:WUXGA/WXGA
ゲーム設定:高/中/低(アンチエイリアス”FXAA”、異方性フィルタリング”16x”)
プレイモード:アンレート
平均(最低)fps | 高 | 中 | 低 |
WXGA | 146(88)fps | 164(119)fps | 172(124)fps |
WUXGA | 97(64)fps | 127(79)fps | 138(99)fps |
ノートでも動かせる超軽量級のFPSゲームです。競技性の高いゲームなので、できれば100fps以上は欲しいところ。
トップクラスに軽いゲームということで、WUXGAでも平均100fps以上を狙えます。ただし、ディスプレイは60Hz出力なので、最高でも60fps止まりという点には注意です。
FF14(ファイナルファンタジー14 暁月の終焉)
最高品質 | 高品質 | 標準品質 | |
WXGA | 5559 | 7533 | 9549 |
WUXGA | 2930 | 4449 | 6259 |
知名度バツグンの国内産MMORPGですね。スコア9000以上で平均60fpsをキープできます。現行のゲーミングPCであれば、フルHD・最高設定でスコア9000をしっかり超えたいところ。
このクラスのゲームには全く歯が立たず、WUXGAではスコア9000をクリアできません。ただし、WXGA・標準品質ならスコア9000を超えており、以前の内蔵グラフィックより大幅に進化しているのはたしかです。
CrystalDiskMark
【CrystalDiskMark】は、ストレージの読み書きの転送速度をチェックソフトです。ポイントはランダムデータ(4Kと書いてある項目)の転送速度。これが速いほど、ブラウジングやアプリの動作が速くなり、実用的なストレージといえます。
このモデルは、256GB SSDを搭載しています。普段使いなら十分な容量ですが、編集用途で使うなら512GB以上に増やすのがおすすめ。もちろん、SSDは通常タイプよりも4~5倍高速のNVMeタイプで、爆速の”Gen.4”規格を採用する本格派仕様です。
なお、メーカーはレアなUnion Memoryですね。肝心の速度ですが、シーケンシャル(連続データ)の読み書き速度は2000~3000MB/s台とGen.3+αクラスの速度。また、ランダムもGen.3とほぼ同等となっており、Gen.4タイプにしてはちょっと物足りないです。
ただし、実際の使用感はSSDらしくとても快適。OSの起動からブラウジング、各種アプリの動作にいたるまでサクサク動きます。
温度
CINEBENCH R23実行時の温度を測定してみました。なお、室温は25℃です。
安定性重視の動作システムとなっており、フルロード時ではP-コアの温度が70℃台半ば、動作クロックも1.7GHzと低め。スリム&コンパクトボディなので、パワーをセーブしないと冷却が追い付かない感じです。
動作音
FF14実行時のPC正面でノイズを測ってみました。※防音室や無響室での測定ではないので、あくまでも参考までにどうぞ
50デシベルを超えるとノイズが気になるようになりますが、ピーク時で51.1デシベルとやや上回っています。ファンは高速回転していますが、甲高いノイズ音などなく、さほど気になりません。
なお、最小時では46.9デシベルとありますが、アイドルなのでほぼ無音です。
バッテリー持続時間
「bbench」でバッテリーの持続時間を調べてみました。条件は4つで、実際の使用感に近い設定にしています。
- 電源設定:インテリジェント・クーリング、トップクラスの電力効率
- バックライト:40%
- 10秒ごとにキー入力
- 1分ごとに無線LAN経由でネット接続
結果は約10時間10分をマーク。モバイルノートの目安である10時間を超えており、出先でも安心して使えます。
便利なユーティリティーソフト
レノボでおなじみ、システム管理の”Commercial Vantage”を完備。バッテリーやディスプレイ、サウンドの設定からシステムの更新などサポートに至るまで、このアプリで全て設定できます。一元化されているので、とても分かりやすいのはグッド。
ちなみに、動作モードは”インテリジェント・クーリング”で管理され、Windowsの電源プランに連動して自動で切り替わります。
サウンドシステムは、有名どころの”Dolby Atmos”を搭載しており、イコライザで好みのサウンドを設定できます。
肝心の音質ですが、低音~高音まで伸び、重低音もしっかり再現。また、音質は厚みがあり、それでいてクリア。サラウンドもしっかり効いており、迫力あるサウンドを楽しめます。内蔵スピーカーにしてはかなりクオリティが高く、見かけによらずいい音が出ます。
まとめ&関連モデル
マグネシウム×カーボンのW素材により、14インチモデル屈指の軽量&タフボディを実現。各種装備も充実しており、ハイエンドモデルにふさわしいクオリティとなっています。価格は21万円台と相応に高く、ThinkPadのモバイルノートで、軽さと品質にとことんこだわるならおすすめです。
ThinkPad X1 Carbon Gen.11[Core i7-1370P搭載モデル]
【スペック】
■OS:Windows 11
■ディスプレイ
14.0インチ WUXGA ノングレア IPS
■CPU:Core i7-1370P
■メモリ:32GB(LPDDR5-6400)
■グラフィック:Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
■ストレージ:SSD 512GB(PCIe NVMe Gen.4)
■価格:455,730円⇒271,722円(税・送料込)~
インテル第13世代12コア16スレッドCPU・Core i7-1370Pを搭載したハイスペックモデル。Core i5-1335Uよりも約30%性能が高く、大容量メモリ&SSDも相まって、編集作業がさらにはかどります。
【関連モデル】ThinkPad L13 Gen.4(AMD)[Ryzen 5搭載]
【スペック】
■OS:Windows 11
■ディスプレイ
13.3インチ WUXGA ノングレア IPS
■CPU:Ryzen 5 PRO 7530U
■メモリ:16GB(DDR4-3200)
■グラフィック:Radeon RX Vega 7(CPU内蔵)
■ストレージ:SSD 512GB(PCIe NVMe Gen.4)
■価格:240,900円⇒149,358円(税・送料込)~
AMDの第7世代6コア12スレッドCPU・Ryzen 5 PRO 7530Uを搭載した、低価格の13インチモデルです。重さは約1.26kgと軽く、ディスプレイの色域はsRGB 100%(300nit)と広め。
予算重視のモバイルノートならまずおすすめ。