今回はマイクロソフトの【Surface Pro X】をレビュー。
デタッチャブル(分離)タイプの2in1モバイルノートに新モデル登場。ARM版のWindows 10を搭載した、マイクロソフトの意欲作をチェックしてみましょう。
スペック
※2020年3月18日時点での内容です。製品仕様・販売価格については変更となる可能性があります。
外観
タブレット
モバイル性に優れた軽量ボディ
梨地仕上げの美しいアルミボディが魅力のタブレットですね。見た目こそ”Surface Pro 7”にそっくりですが、ディスプレイは一回り大きい13インチサイズを搭載しています。
しかしディスプレイのベゼル(ふち)をスリムにすることでコンパクトボディを実現。12.3インチディスプレイを搭載したSurface Pro 7に近い大きさとなっています。
A4用紙(297×210mm)よりコンパクトなので、A4ファイルサイズと比べるまでもありませんね。
Surface Pro 7とは異なりファンレスボディなので、厚さ7.3mmとかなりスリムで、カバンへの収納もラクラク。また、本体の重さも実測で782g(実測)と非常に軽く、オプションのタイプカバー(実測280g)を合わせても、1062gと圧倒的に軽く、モバイル性はバツグンです。
なお、ファンレスなので動作音は全くなし。図書館など静かな環境でも気兼ねなく使えます。
選べる3つのモード
2in1タイプの最大の魅力は、一般的な開閉タイプでは真似できない、フレキシブルな使い方ができること。
タブレットとしてお気軽に使えるのはもちろん、本体にはキックスタンドがついており、スタンドモードでも使うことができます。
最大175度まで大きく開き、ペンを使ってメモ書きやイラストを描いたりするのに便利なモードです。
そしてやはりコレ、タイプカバーを接続してのノートPCモードですね。オフィスソフトを使ってレポートやエクセルなどを作成するのに最適。さすがにタッチパネルのキーボードで作業するには無理があるので、タイプカバーはオプションながら、マストアイテムです。
なお、ヒンジ部分はかなり頑丈に造られ、任意の角度でビシッと止まります。タッチやペン操作で角度が開く…なんて心配はありません。
高輝度ディスプレイ搭載
先に紹介した通り、13インチサイズのディスプレイを搭載しています。10インチの”Surface Go”よりもだいぶゆとりがあるため、長時間作業していても疲れにくく、最低でもこのクラスは押さえておきたいところです。
ディスプレイ解像度は2880×1920とやや変則的。WQHDよりも高い解像度なので、オフィスソフトでの作業はもちろん、各種編集作業もはかどります。
特筆すべきはその明るさで、輝度はなんと450nit!一般的なノートだと200~300nitが相場なので、まさに圧倒的。非常に鮮やかな映像描写で、動画鑑賞などエンターテインメントコンテンツにも最適です。
滑らかなタッチパネル
2in1タイプということで、タッチやペン操作にも対応しています。
表面は硬質のパネルでカバーされ、指紋やキズがつきにくくなっています。また、表面はとても滑らかなので、タッチやペン操作もスムーズに行うことができ、ストレスフリーの完成度です。
最新のインターフェース
タブレットながら、USBはしっかり2ポート搭載。全てが最大10Gbpsの高速転送や大容量給電に対応した【USB3.2 Type-C Gen.2規格】となっています。
しかしそれ以外のインターフェースは搭載しておらず、あくまでも最低限といったところです。それにしても、ヘッドフォンジャックが無いのはちょっと残念。Bluetoothで代用することもできますが、3.5mm規格はバリバリ現役なので、ぜひつけてほしかったですね。。
電源はこの通り、Surface Connectから給電します。マグネット方式なので、着脱はとてもかんたん。なお、USBやLANポートなどの拡張デバイス”Surface Doc”はこのポートに接続します。
eSIMをサポート!LTE通信対応
このモデルではLTEモジュールを内蔵しています。データ通信SIMさえあれば、いつでもどこでもネット環境を利用できます。フリーWiFiスポットを探す手間が省け、まさにストレスフリーですね。
規格は一番小さいnano SIMで、キックスタンドの内側にSIMスロットが用意されています。なお、カバーは付属のピンで簡単に開けることができます。
ちなみに、SIMスロットの上にはM.2 SSDも搭載されており、保証期間外に自力で修理することもできます。ただ、サイズが2230タイプと珍しく、モノを探すのに難儀しそうです。。
対応しているLTEバンドは下記の通りで、3大キャリアの4G周波数帯はしっかり押さえています。
さらに、”eSIM”に対応しているのもポイント。
eSIMとはSIMカードを本体内部に組み込んだもので、電子的に発行されます。SIMカードと併用することで、デュアルSIMのように使うこともできます。
日本では、IIJmio が2020年3月19日に正式版eSIMサービスを開始する予定となっており、このモデルのほか、”Surface Pro LTE Advanced”が対応機種に含まれています。
Surface Pro X Signature キーボード(オプション)
オプションで専用のタイプカバー”Surface Pro X Signature キーボード’‘が用意されています。パソコンとして使うなら必須ですね。
マグネットでがっちり固定
タブレットとキーボードは強力なマグネットでがっちり固定され、ビクともしません。それぞれの連結部を近づけるとグッと引き寄せられるほどの強さで、安定性はバツグンです。
分離タイプだとタブレットとタイプカバーが外れやすいものもありますが、そんな心配は全くありません。
操作性の高いスリムペン
キーボードには英語版と日本語版の2タイプがありますが、日本語版ではスリムペンが標準で付属しています。
ペンはキーボードの奥側に収納でき、これまたマグネットでがっちり固定されているので、外れる心配もありません。さらに収納時には自動で充電する親切仕様と、まさに至れり尽くせりですね。
”Surface Pen”と同じく4096段階の高い筆圧検知に対応していますが、応答速度がだいぶ向上しており、直感的な入力ができるようになっているのは好印象。さわってすぐわかるレベルの違いです。本物の鉛筆のような精細な書き心地で、イラスト制作にも最適。
ちなみに、充電タイプなので重さは実測で14gと、電池式のSurface Penに比べ約7gほど軽くなっています。この差は小さいようで大きく、長時間の作業でもラクラクです。
ゆとりのあるキーピッチ
13インチのコンパクトボディなのでテンキーレスキーボードを搭載。キーの種類も最低限となっています。
横幅を目いっぱい活用しており、キーピッチは約19mmと、デスクトップキーボード並みのゆとりが確保されています。各キーは完全に独立し、配置も基本的に素直なので、誤爆の心配はまずありません。
キーストロークも一般的なノートパソコン並みの深さがあり、反発感もあるので、打鍵感は良好です。ただ、見ての通り薄いため剛性は弱く、底打ち感があるのはネック。こればかりは構造上割り切るしかありません。
ちなみに、キーボードにはトレンドの白色LEDを内蔵しています。薄暗い場所でタイピングしやすくなるのはもちろん、明るい輝きで見た目も華やか、まさに一石二鳥ですね。ちなみに、OFF+2段階の明るさに設定できるので、LEDが苦手な方でも安心。
スムーズなタッチパッド
タッチパッドはオーソドックスな一体型タイプを採用しています。
パッド部分はサラサラした材質を使用し、カーソル操作はとてもスムーズ。また、クリックボタンも軽い力で反応し、建付けもしっかりしているのでバタつかず、上々の操作性を実現しています。
ただ、いかんせんスリムなのでクリック音を吸収しきれず、カタカタとやや大きめなのはちょっと残念。
ちなみに、キーボード面・裏面ともにファブリック仕上げとなっており、金属特有のヒンヤリ感が無いのはグッド。特に裏面はフエルト素材でカバーされ、温かみを感じさせます。
Dolby Audio Premium 対応オーディオ
ディスプレイもさることながら、スピーカーのクオリティも高くなっています。
音響システムでおなじみ”Dolby Audio”のサウンドエンジンを採用。アプリを使えばシーンごとに最適なサウンド設定ができるほか、自分好みのサウンドにカスタマイズもできます。
肝心の音質ですが、低音こそ弱いものの、中音・高音がよく伸び、音質も引き締まった感じで、タブレットとは思えないクオリティです。また、サラウンドもしっかり効いており、臨場感もバッチリ。音楽や動画鑑賞にうってつけですね。
パフォーマンス
ARMアーキテクチャのSoC採用
現在販売されているノートパソコンのほとんどは、インテルやAMDの一般的なx86(x64含む)アーキテクチャを採用していますが、このSurface Pro Xでは、ARMアーキテクチャのSoC【Microsoft SQ1】を搭載しています。
ちなみに、SoCとはCPUやGPU(グラフィック機能)、チップセットなどを一つにパッケージングしたもの。SoC自体特別なものではなく、インテルやAMDでもこのスタイルでリリースされているのが一般的です。
製造しているのは、スマホやタブレット用のSoC・Snapdragonでおなじみ”Qualcomm”です。モバイル端末向けのチップセットベンダーらしく、SoC内部に電話通信回線モデムを内蔵しているのがポイント。低コストで省電力の通信性能を実現するにはうってつけのSoCというわけですね。
CPUはこの通り8コア8スレッド構成で、最大3.0GHzで動作します。
ARM版Windows 10搭載
ARMアーキテクチャのSoCということで、Windows 10もARM版のものを搭載しています。ARM版といえども基本的な機能は通常のx86向けWindows 10と共通しているため、同じ感覚で使うことができ、製品エディションをProへアップグレードすることも可能です。
アプリの動作ですが、x86向けのWindows用アプリはそのままだと動作しないため、x86の互換機能が用意されています。ただ、この機能は万能ではなく、制限がある点に注意。
サクッとまとめるとこんな感じー
- x86(32bit):動作
- x64(64bit):非動作
- ARM(64bit):動作
ARMベースのアプリが動くのは当然として、互換性があるのはあくまでもx86版のアプリのみとなります。
ネックなのは、x64版でのみ動作するアプリが普及し、ARMベースのアプリが少ない現状では、使えるアプリが限られていること。
例えば、メジャーなクリエイティブアプリのAdobeで使用できるのは”Photoshop”や”Bridge”など一部のものに限られます。また、筆者がパソコンの性能を測定する際に使用する、各種ベンチマークツールもx64版へ移行しており、ほぼほぼ動かないのが実情です。
なお、プリインストールされているMicrosoft Officeはx86版ということで全く問題なく動作します。使えるアプリが限定的ということで、少なくとも現時点ではブラウジングやオフィスソフトなどの基本的なタスクで使う感じになります。
ベンチマーク
性能を詳細にチェックしたいのはやまやまですが、実際に動かせたのは以下3つのみとなります。
PCMark 8 MICROSOFT OFFICE TEST
パソコン性能を総合的に測る”PCMark 8”に内蔵されている機能で、その名の通りMicrosoft Officeの処理性能を測定することができます。なお、HOMEテストなどの通常のベンチマークモードは動作しませんでした。
その結果ですが、スコア1727をマーク。性能のイメージとしては、インテルのPentiumなどデュアルコアCPUクラスといったところでしょうか。
実際の使用感ですが、ブラウジングや各種アプリはサクサク動きますね。普段使いであれば全く問題ない感じです。
ドラクエ10
グラフィック品質にこだわらなければ、ノートPCでもプレイできるほどの軽さが特徴です。スコア5500以上で平均60fpsをキープできます。
最高品質 | 標準品質 | 低品質 | |
HD | 3080 | 3206 | 3520 |
フルHD | 2942 | 3121 | 3254 |
ARM版のDirectXが用意されているので、アプリの条件さえ満たせば、オンラインゲームも動きます。しかし、性能はこの通りスコア5500に届かず、インテルの内蔵グラフィックに比べると性能は低めです。
CrystalDiskMark
【CrystalDiskMark】は、ストレージの読み書きの転送速度をチェックソフトです。ポイントはランダムデータ(4Kと書いてある項目)の転送速度。これが速いほど、ブラウジングやアプリの動作が速くなり、実用的なストレージといえます。
このモデルは256GB SSDを搭載したシングルストレージ構成です。128GBでは実際使える容量が100GB未満と少ないので、やはり256GBあると安心。メーカーはメジャーなSK Hynix製となっており、SSDは通常タイプよりも4~5倍速いNVMeタイプのSSDを採用しています。
その速度ですが、シーケンシャル(連続データ)の読み込みは4ケタをマークする爆速ぶり。しかし、それ以外はランダム含めいまいち伸びず、NVMeタイプにしてはちょっと物足りない感じですね。
ただし、SSDレベルでは数値の差を体感することはできないので、そこまで結果を気にする必要はありません。
バッテリー持続時間
「bbench」でバッテリーの持続時間を調べてみました。条件は4つで、実際の使用感に近い設定にしています。
- 電源設定:バランス、推奨バッテリー
- バックライト:40%
- 10秒ごとにキー入力
- 1分ごとに無線LAN経由でネット接続
結果は約8時間50分と、10時間には届かないものの、モバイルノートとしては十分及第点ですね。9時間も持てば、出先でも安心して使えます。
選べるバリエーション
このモデルでは、4つのバリエーションが用意されています。
- 8GBメモリ/128GB SSD
- 8GBメモリ/256GB SSD
- 16GBメモリ/256GB SSD
- 16GBメモリ/512GB SSD
基本的には8GBメモリ・256GB SSDの鉄板構成がおすすめ。データのさほど保存しないのであれば、128GBで割り切ってしまうのもあり。
編集用途ならメモリ&ストレージを多く使うので、16GBメモリ・512GB SSDのマシマシ構成がおすすめです。
まとめ
ARM版のWindows 10を搭載した意欲作ですが、現時点では使えるアプリが限られており、ブラウジングやオフィスソフトでの作業など、普段使いがメインとなる感じですね。ただ、今後のアプリ次第では大化けする可能性も秘めており、その実力はまだまだ未知数というのが正直なところ。
無難に行くならSurface Pro 7ですが、新しいアクティブペンの完成度がなかなかに衝撃的で、これだけでも十分試す価値はあります。気になる方はぜひ!
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