クリエイターPCの購入で重要となるのは、用途や予算に応じたモデル選びです。そのためにはある程度パーツの知識が必要になってきます。
「CPU」や「HDD」などの横文字を前に、真っ白にならないためにもーそしてなにより、せっかくのいい機会なので、さくっとおさえておきましょう。
デスクトップとノートのどちらがおすすめ?
クリエイターPCには、デスクトップとノートの2タイプが用意されていますが、それぞれメリットがあるので、目的にあったタイプを選ぶようにしましょう。
性能・価格面を重視するならデスクトップがおすすめ。
性能面では、例えば同じCore i7でも、デスクトップとノートではワンランクグレードが変わってきます。また、価格も特殊な筐体や基盤を使っていない分、ノートに比べ割安となっています。まずはデスクトップを検討するのがおすすめですね。
携帯性や省スペースを求めるならノートがおすすめ。
ノートPC最大の武器は、なんといっても持ち運べること。最近では高性能GPUを搭載した軽量モデルも販売されており、携帯性にさらに磨きがかかっています。もちろん、コンパクトボディということで、どこにでも置けるのもポイント。設置スペースが限られている場合にもおすすめです。
なお、ノートではディスプレイの色域のバリエーションが少なく、Adobe RGBやDCI-P3を広くカバーするディスプレイが欲しい場合には、別途購入する必要があります。
デスクトップ・ノート共通のパーツ
CPU
例えるのであれば「頭脳」で、各種プログラムの処理を担当するパーツです。クリエイターPCでは最重要となるパーツで、性能が高ければ高いほど処理能力が向上し、イラスト作成や動画編集などあらゆる作業を快適にこなすことができます。
CPUのメーカーには”インテル”と”AMD”の2社がありますが、クリエイターPCはほとんどインテルCPU搭載モデルとなっており、基本的にインテルCPU一択となります。
Core i7をベースにして、予算重視ならCore i5、性能にとことんこだわるならCore i9を選ぶのがおすすめ。同じグレードでも、世代によって大きく性能が変わり、大幅な進化を遂げた最新の第12世代CPU(Core i7-12700やCore i5-12400など)がだんぜんおすすめです。
下のグラフは、3DCGのレンダリング性能を測る”CINEBENCH R23”でのベンチマーク結果です。[D]はデスクトップ用CPU、[N]はノート用CPUを表しています。
デスクトップ用CPUなら、Core i7-12700がまずおすすめ。下位のCore i5-12400よりも約60%も性能が高く、ヘビーな作業も快適。ちなみに、動作クロックの高さも編集作業では重要になるので、パフォーマンス重視なら、高クロックのK付きCPUがおすすめです。
ノート用CPUはデスクトップ用CPUのデチューン版ということで、性能は低め。Core i7がメインとなり、高性能のHシリーズと省エネのPシリーズの2タイプがあります。Core i7-12700HとCore i7-1260Pでは約70%もの差があるので、できればHシリーズを選びたいところですね。
グラフィック
例えるのであれば「画力」で、映像描写を担当するパーツです。動画編集や3DCGの制作などでは、CPU以上に重要なパーツとなります。
グラフィック機能には、CPUに内蔵されたグラフィック機能【iGPU】と、CPUとは別に強力なグラフィック機能をもつ【dGPU(グラフィックボード)】の2タイプがあります。
下のグラフは、グラフィックの性能を測る”3D Mark”でのベンチマーク結果です。Fire StrikeはDirectX 11、Time SpyはDirectX 12ベースのテストとなります。なお、[D]はデスクトップ用グラフィック、[N]はノート用グラフィックを表しています。
UHD 770とIris Xe GraphicsはiGPUですが、その他dGPUとの性能差は一目瞭然。画像編集や軽めの動画編集ならiGPUでも対応できますが、4K動画編集や3DCGの制作、3D CADなどヘビーな作業にはdGPUがおすすめ。
デスクトップ用dGPUのイチオシはRTX 3060です。VRAM(グラフィックメモリ)を12GBと多めに搭載し、価格が安く、コスパに優れています。より性能にこだわるなら、RTX 3070やRTX 3080(VRAM 12GB)がおすすめ。RTX 3090以上はプロ向けのdGPUとなります。
なお、価格の安さで人気のあるGTX 1650ですが、性能もさることながら、VRAMが4GBと少ないので、3DCGのレンダリングや4K動画編集ではVRAM不足になる場合があります。あくまでも軽作業向けとなります。
GeForceとQuadroの違い
GPUを製造するNVIDIAでは、”GeForce”と”Quadro”の2ブランドを展開しています。
GeForceがコンシューマー向け、Quadroはプロ向けのブランドという位置づけで、市場に出回っているものはほとんどGeForceのGPUとなっています。
なお、Quadroシリーズは最新世代からネーミングが変わり、RTX A2000やRTX A4000など、Quadroが入らないようになっています。以下両者の違いを簡単にまとめてみました。
Quadro | GeForce | |
用途 | プロ向け クリエイティブ作業向け | 一般ユーザー向け ゲーマー向け |
10億色表現 | 対応 | 対応(Turing世代以降) |
GPUコア | 同一コアを採用 | |
VRAM | 最大48GB | 最大24GB |
保証 | 3年 | メーカー・代理店次第 |
価格 | 高価 | 安価 |
アプリの動作認証 | あり | 無し |
両者のおおまかな違いは、VRAM容量・価格・アプリの動作認証の3点。
映像制作の現場で特に重要となる色の表現力ですが、Quadro・GeForceともに10億色(10bit出力)に対応しています。以前はQuadroの専売特許で、GeForceは1677万色(8bit出力)までとなっていましたが、前世代となるTuring以降では10億色の表現に対応するようになりました。
また、Quadroの強みであるアプリの動作認証についても、各種クリエイター向けソフトウェアに最適化されたドライバソフト”NVIDIA STUDIO Driver”がGeForceシリーズに提供されているので、Quadroと同じように使うことができます。
RTX A6000 | GeForce RTX 3090 | |
GPUコア | GA102(Ampere) | |
CUDAコア | 10752 | 10496 |
メモリバス | 384bit | |
VRAM | 48GB | 24GB |
消費電力 | 350W | 300W |
価格 | 700,000円 | 200,000~300,000円 |
性能面を比較してみるとこんな感じです。いずれもハイエンドクラスのモデルとなります。
GPUコアは同一のものを採用しており、性能の要となるCUDAコアもほぼ同じ。違うのはVRAM容量と価格で、RTX A6000は48GBと破格レベルの多さですが、価格はなんと70万円台と非常に高価。正直コスパはかなり悪く、これだけのものが求められるのは、プロのクリエイタースタジオくらいのものです。
基本的な性能・機能は両者共通しており、コスパに優れたGeForceがだんぜんおすすめ。
ベンチマークでCPU&グラフィック性能をチェック
Lightroom Classic CC
RAW現像では、”Lightroom Classic CC”を用いて、200枚のRAW画像(5760×3840ドット、CR2形式)を最高画質のJPEG画像に書き出す時間を計測しました。なお、結果は秒で表記しています。
やはり性能の高さはデスクトップ用CPUに軍配が上がります。Core i9-12900HがCore i7-12700とほぼ同等の性能となり、ノート用CPUはワンランクグレードが下がってしまいます。
デスクトップ用CPUならCore i7-12700がまずおすすめ。Wコアを採用した12コア20スレッド構成なので、6コア12スレッドのCore i5-12400より約31%も早く変換を完了しています。Core i9ともなるとさらに約20~25%の時短効果を発揮しますが、価格が跳ね上がるのがネックですね。
ノート用CPUについてもまずはCore i7-12700Hがおすすめ。コア・スレッド数の多さもさることながら、動作クロックも高く、下位のCore i7-1260Pより約38%も早く変換を完了しています。Pシリーズはあくまでも一般ノート向けの省エネCPUなので、編集用途ならHシリーズは欲しいところです。
TMPGEnc Video Mastering Works 7
動画エンコードでは、”TMPGEnc Video Mastering Works 7”を用いて、再生時間6分30秒のMJPEG動画をMP4形式に変換する時間を計測しました。なお、結果は秒で表記しています。
やはりデスクトップ用CPUのパフォーマンスが高く、Core i9-12900HがCore i7-12700とほぼ同等の性能となっています。
RAW現像と同じく、デスクトップはCore i7-12700、ノートはCore i7-12700Hを選びたいところ。Core i7-12700とCore i5-12400との差は最大37%、Core i7-12700HとCore i7-1260Pとの差も最大44%とかなり大きくなり、作業の快適さは段違いです。
動画エンコードの目玉は、GPU機能を活用した高速エンコード機能です。iGPUでは”QSV”、dGPUでは”NVENC”を使うことができます。
その実力ですが、iGPUでもCPUエンコードを圧倒し、大幅な時短効果を発揮します。GTX 1650でも効果が大きく、重量級のH.265ではiGPUよりも約28~34%早く変換を完了しています。なお、dGPUはグレードで大きく時間が変わらないため、エンコード目的ならGTX 1650でも十分です。
Blender
3Dグラフィックレンダリングでは、”Blender”を用いてデモデータをレンダリングする時間を計測しました。結果は秒で表記しています。
やはりデスクトップならCore i7-12700、ノートならCore i7-12700Hがおすすめ。RAW現像や動画エンコードと同じく、下位CPUとの差が約30~40%と大きく開いています。
Blenderでは、dGPUを活用した高速レンダリング機能に対応しており、”CUDA”と”OptiX”の2タイプが用意されています。GTXシリーズではCUDAのみ対応していますが、RTXシリーズでは超高速のOptixにも対応しているのがポイントです。
CPUレンダリングとは比較にならないくらいに高速で、CUDAでも最大1/10の時間で完了するほど。OptixともなるとCUDAの約半分にもなるので、とことん性能にこだわるならRTXシリーズがだんぜんおすすめ。なお、RTXシリーズでもRTX 3050はRTX 3060の約2倍もの時間がかかるので、RTX 3060以上がおすすめです。
dGPUレンダリングで注意したいのは、VRAM(グラフィックメモリ)の容量です。VRAMが4GBのモデルでは、メモリ不足のため、重量級のレンダリングに対応できません。3DCGの制作で使うのであれば最低でも6GB、できれば8GB以上は欲しいところです。
FF14 暁月の終焉
ゲーム性能はFF14ベンチマークでチェック。スコア9000以上が平均60fps以上で快適にプレイできる目安となります。なお、ノート用のGPUはフルHDのみ記載しています。
dGPUとiGPUとの差は一目瞭然で、iGPUではフルHDレベルでも全く歯が立ちません。動かすことができるのは、ドラクエ10やVALORANTなど非常に軽いものに限られ、オンラインゲームを楽しむならdGPUは必須。
フルHDでのおすすめは、デスクトップだとRTX 3050やGTX 1660 SUPER、ノートだとRTX 3050ですね。いずれもスコア9000を大きく超えており、安定してプレイできます。
WQHDではRTX 3060~RTX 3060 Tiがおすすめ。RTX 3050やGTX 1660 SUPERでもスコア9000を超えますが、ほかのゲームだと平均60fpsをキープするのがきつくなります。
4KだとRTX 3070以上、特に安定性を重視するならRTX 3080以上がおすすめです。RTX 3060 Tiでもスコア9000を超えますが、4Kでは微妙に性能が足りないので、やはりRTX 3070以上がおすすめ。
グラフィックボードの性能【デスクトップ】 | ||||
エントリー | ミドル | アッパーミドル | ハイスペック | ハイエンド |
フルHD入門 | フルHD推奨 | WQHD推奨~4K入門 | 4K推奨 | 4K&RT推奨 |
GTX 1650 | RTX 3050 GTX 1660 SUPER | RTX 3060 Ti RTX 3060 | RTX 3070 Ti RTX 3070 | RTX 3090 Ti RTX 3090 RTX 3080 Ti RTX 3080 |
dGPUの性能については、各ページをチェックしてみてください(ゲーミングPCの記事となります)。
メモリ
例えるのであれば「デスク」です。ゲームやインターネットブラウザを実際に動かすスペースですね。デスクが広ければ広いほど、つまりメモリの容量が大きければ大きいほど一度にできる作業量が増えます。
メモリが足りないと、動作が遅くなったり、停止したりしてしまいます。ブラウジングやオフィスなどの軽作業であれば8GBで十分ですが、ゲームや編集用途であれば最低でも16GBを積むようにしましょう。
なお、ゲーム+配信や4Kの動画編集であれば、32GBがおすすめ。さらに、3DCGの制作や3D CADなどヘビーな作業でも使うなら64GBがおすすめです。
ストレージ


例えるのであれば「本棚/収納スペース」です。Windowsやゲーム、データ類などを入れておく場所です。
種類は”HDD(ハードディスク)”と”SSD”の2タイプがあります。ハードディスクは聞いたことがあるのではないでしょうか。


■HDD
容量が大きい
価格が安い
データの転送速度が遅い
■SSD
データの転送速度がかなり速い
容量が少ない
HDDに比べるとやや割高
最近ではSSDの価格がだいぶ安くなり、大容量SSDを搭載したモデルとSSD+HDDのデュアルストレージモデルがが主流となっています。今ではHDDオンリーのモデルはまず見かけません。
なお、デュアルストレージ構成では、OS(Windows)やゲームなど処理スピードを求められるものは高速のSSDに、画像や動画類などかさばるデータ類は容量の多いHDDに入れるといった使い分けができ、SSD単体構成よりも便利です。
■SSD
512(480)GB以上
ちなみに最近のオンライゲームのクライアント(ゲーム本体のデータ)は50GB~級のものがざらです。容量が大きければ大きいほど、複数のオンラインゲームを楽しむことができます。
■HDD
編集用途なら2TB以上がおすすめ
写真や動画をほとんど保存しないということであれば、500GBや1TBでもOKです。 動画や画像編集でも使うなら、素材データが多くなるので、2TB以上入れておくと安心。
NVMe SSDとは?
SSDには現在2種類のタイプがあり、従来の”SATA接続タイプ”と”NVMeタイプ”のSSDがあります。
NVMeタイプのSSDは従来のSSDよりも転送速度が4~5倍速く、BTO各社で盛んにプッシュされています。ゲームでは速度差をほとんど体感できませんが、大容量のファイルの転送などでは時短効果を発揮します。
割高な価格がネックでしたが、今では通常タイプのSSDとそん色ない価格まで安くなり、基本的にNVMe SSD搭載モデルがおすすめ。
デスクトップのみ搭載のパーツ
電源
例えるのであれば「変電所」です。コンセントから引っ張ってきた電気を各パーツで使える形式に変換し、電力を供給します。まさに大本の部分で、地味ながら重要パーツ。
ポイントは「容量(各パーツに供給できる電力の量)」と「変換効率(コンセントからの電気をどれだけロスなく変換できるか)」です。
まず容量ですが、グラボのグレードによって変わります。なお、販売モデルでは最適な容量が選択されており、特にカスタマイズする必要はありません。
・GTX 1650シリーズ:400W
・GTX 1660シリーズ:500W
・RTX 3060~RTX 3070:700W
・RTX 3070 Ti~RTX 3090 Ti:800W
重要なのが変換効率で、これには”80PLUS認証”という規格があり、変換効率ごとに下はスタンダードから上はチタンまでの6段階でランク付けされています。上のグレードになるほど省電力・低発熱・高寿命になります。
上のグレードになるほど省電力・低発熱・高寿命となるので、最低でもブロンズクラスのものは入れておきたいところです。少しでも長く使いたいのであればゴールド以上を選びましょう。
CPUクーラー
文字通りCPUを冷やすためのパーツです。CPUは特に熱くなるパーツなので、冷却には気を付けたいところ。タイプは、”空冷式クーラー”と”水冷式クーラー”の2タイプがあります。
空冷式
「ヒートパイプ」「放熱フィン」「ファン」の3点で構成されるスタンダードなタイプ。CPUの熱をヒートパイプで吸収し、ファンを回しつつ、フィンで発散させる仕組みです。
水冷式に比べると冷却能力は劣りますが、とにかく単純な構造なので壊れにくく、低価格なので、まずおすすめ。
ちなみに、インテルCPU搭載モデルでは、基本的に簡素な空冷式の小型ファンが付いています。大型のCPUクーラーよりも冷却性能が低く、約10~20℃ほどの差があります。
CPUは温度が低くなるほど故障するリスクが低くなるので、特に熱くなりがちなCore i7以上では大型のCPUクーラーへカスタマイズするのがおすすめです。
水冷式
ポンプ・ラジエーター・ファンの3点で構成されています。内部に冷却液が入っており、CPUの熱をポンプで循環させ、ファンを回しつつラジエーターで発散させる仕組みです。
空冷式よりも冷却能力が高いのが何よりの特長。特に発熱の高いK付きCPU(Core i7-12700KやCore i9-12900K)などではこのタイプがおすすめです。
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